適切な採用媒体を選ぶことは、人材採用を成功させるための第一歩です。「なかなか良い人材が集まらない」「採用しても早期退職されてしまう」といった悩みを抱える企業は、まずは採用媒体の選定から見直す必要があります。この記事では、各採用媒体の特徴やメリットについて解説します。

採用媒体(求人媒体)とは？

採用媒体とは、新たに人材を採用したいと考える企業が、求人募集の際に利用する媒体のことです。採用媒体は企業と求職者（採用候補者）の間の接点を作る大切なもので、求人媒体とも呼ばれます。近年では、インターネットを活用した採用活動が主流となっており、採用媒体というとWebの求人サイトをイメージする人が多いようです。実際には、求人情報誌などの紙の媒体や、ハローワークといった公共サービスも採用媒体に含まれます。

採用媒体の種類と特徴は？

採用媒体にはさまざまな種類が存在し、それぞれに特色やメリットがあります。一つ一つ理解することが、採用活動を成功に導くためのポイントです。ここからは、現在扱われることの多い4つの採用媒体について解説します。

ハローワーク

ハローワークは、「国民に安定した雇用機会を確保すること」を目的として設置された施設です。各自治体の労働局によって運営され、正式名称を「公共職業安定所」といいます。求職者のみならず、採用活動を行う事業主も無料で利用できることが大きなメリットです。弱みとしては、求人票に記載できる事項が限られることが挙げられます。企業の魅力や職場環境といった情報を伝えにくいため、求める人材が思うように集まらないことがあります。

Web求人サイト

求人サイトは、採用活動を行う多くの企業の求人情報を網羅したWebサイトです。求人サイトを利用するメリットは、記載できる情報が多いことです。掲載内容の自由度が高く、自社の強みやアピールポイントをふんだんに盛り込むことができます。文字だけでなく写真を添付することで、視覚的に求職者の興味をひきつけることも可能です。求人サイトは閲覧者数が多く、幅広い層にリーチできる点もポイントです。

デメリットを挙げるとするならば、他社との競合のおそれがあることでしょう。たくさんの企業が求人情報を掲載するため、時に自社の掲載内容が埋もれてしまうことがあります。ハローワークとは異なり、サイトに求人情報を掲載する際に費用がかかる点にも留意すべきです。

求人情報誌（フリーペーパー）

職業紹介事業社や自治体が発行するフリーペーパーにも、求人情報を掲載することができます。フリーペーパーは駅やスーパー、コンビニのほか、ポスティングでも手に入るため求職者にとっては馴染み深い媒体といえるでしょう。特に、インターネットを積極的に利用しないシニア世代の募集にはうってつけです。ただし、こちらも内容に制限があったり、掲載費用がかかったりする場合があることには注意する必要があります。

自社サイトの採用ページ

自社の公式サイト内に採用情報のページを設け、採用候補者に見てもらう方法もあります。ここでの最大のメリットは、表現の自由度がとにかく高いことです。文章からデザインに至るまですべて自社で制作できるため、企業としての個性を表現するのに優れた求人媒体はこれより他にないでしょう。

一方で課題となるのが、ホームページまでの導線をどのように作るかです。せっかく制作したホームページも、閲覧してもらえなければ意味を成しません。求職者の目に触れさせるには、前述の求人サイトにリンクを添付して誘導したり、SNSでの発信を増やしたりするなどの工夫が求められます。

採用媒体の選び方

ここまで4種類の採用媒体についてご紹介しましたが、具体的にはどれを選ぶと良いのでしょうか。「なんとなく」で選ぶのではなく、しっかりと根拠を持って決める必要があります。ここからは、採用媒体を選ぶ際の基準や、選び方のコツを解説します。

職種や雇用形態を考慮する

どのような職種・雇用形態で人材を募集するかは一つの基準になります。営業職なのか事務職なのか、正社員なのかパートなのかなど、まずは募集の概要を整理することから始めましょう。技術職の正社員を募集する場合は求人サイトで、アパレル店の店舗スタッフを募集する場合はタウン情報誌で、というように、各採用媒体の特色に合わせた使い分けを意識しましょう。

採用したいターゲットを明確にする

ターゲットとする人材の年齢層やスキルセットをはっきりさせておくことも大切です。例えば、成長を見込んで若い世代の人材を採用したいのであれば、求人サイトを利用するのが適しています。彼らはインターネットの利用に慣れており、求人サイトを使って求職活動を行うことを苦にしないからです。

一方で、経験豊富な即戦力を求めるのであれば、ハローワークへの求人掲載が良いでしょう。ハローワークは利用者の年齢層が比較的高く、転職希望者の利用も多い傾向があります。また、転職者に特化した求人サイトを活用するのも一つの手です。このように、ターゲットを明確にすると、どの採用媒体を選んだら良いのかが少しずつ見えてきます。

採用にかけられる費用を定める

人材の採用にはどうしても費用がかかります。採用媒体に求人情報を掲載する際は、掲載費用や成果報酬がかかり、それに伴って発生する業務にはすべて人件費が発生しています。それらのコストをいくらまでならかけられるか、しっかりと計算して把握する必要があります。費用を抑えたい場合はハローワークへ、お金をかけてでも良い人材を採用したい場合は、求人サイトや求人情報誌へ掲載すると良いでしょう。

自社の採用サイトを制作するポイント

企業の採用ページは制約が特にないため、制作者の裁量で好きに作ることができます。しかし、自由度が高いぶん、かえって制作が難しいと感じることもあるでしょう。ここでは、自社で採用サイトを制作するにあたって、どのようにしたら採用媒体としての効果を高められるか解説します。求職者にとって魅力的なサイトを制作するコツを知り、人材採用の成功につなげましょう。

企業理念やビジョンを提示する

事業を行う理由や、今後解決したい課題などをまとめたビジョンを提示しましょう。目標や価値観を共有することで、企業として「何を提供できるのか」「どこを目指しているのか」を求職者に伝えることができます。また、会社ならではの社風や文化は企業理念に色濃く表れ、会社全体のイメージを大きく左右するものです。積み上げてきた実績や歴史を大事にしつつも、今という時代に即したものであることが大切になります。

入社後のイメージが湧くような工夫をする

あらゆる求職者は、新たな環境に飛び込むことに少なからず不安を抱えているものです。入社後、思っていたものと違うと感じてモチベーションが上がらなかったり、すぐに退職したりする人も見られます。そうなった場合に企業が負う金銭的・時間的ダメージは計り知れません。

入社後のミスマッチを防ぐためには、採用候補者が実際に働くイメージをしやすくなるように工夫を施す必要があります。社員にインタビューをして記事にまとめたり、スタッフが日々の業務に関する出来事をブログに書き綴ったりするなど、方法はさまざまです。近年では、TikTokやInstagramを活用する企業が増えており、企業イメージアップの戦略としても注目を集めています。

他社との差別化を図る（採用ブランディング）

数多くの企業が存在する現代において、人材採用の分野でも他社との競争は避けられません。どの企業も良い人材を求めるなか、自社の存在をアピールするためには、採用ブランディングが必要不可欠です。

採用ブランディングとは、企業価値を高め、他社と差別化することで、事業成長・目標達成に必要な人材の採用を目指すことです。「他社とはここが違う」「ウチだからこそこれができる」といった唯一性は求職者にとって魅力的に映ります。今一度、自社の強みは何かを考え、洗い出し、アピールポイントとして打ち出しましょう。

まとめ

この記事では、採用媒体の種類やそれぞれの特徴、選び方のコツを解説しました。「これを選ぶのが正しい」という正解は存在しませんが、適切な採用媒体を選ぶことが人材採用の成功に直結することは事実です。

また最後の項で触れたように、自社の採用サイトで採用ブランディングを行うことはとても重要です。採用市場での企業価値と、企業そのもののイメージは強く結びついています。自社の強みを伸ばすのはもちろん、弱点を補強するためにも、良い人材の採用を目指しましょう。