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【2024年版】新卒採用者の初任給アップで競争がさらに激化!中小が意識すべき対策は?
企業の人材獲得競争は激化の一途を辿っています。株式会社マイナビが実施した「マイナビ2024年卒 企業新卒採用活動調査」によると、7割もの企業が新卒採用者の初任給を引き上げました。中には大卒初任給を5万円以上も引き上げる大手IT企業もあり、中小企業は厳しい立場に立たされています。
この記事は2024年新卒採用者の初任給が上がった背景について解説します。
新卒者が何を求めているか、中小企業はどのような対策をとるべきかも取り上げますので、採用に関わる方はぜひご参照ください。
企業の7割が新卒採用者の初任給をアップ
「マイナビ2024年卒 企業新卒採用活動調査」によると7割もの企業が新卒採用者の初任給を引き上げました。
企業全体で見た初任給を引き上げた理由についてのデータは次の通りです。
初任給を引き上げた理由 | 企業全体での割合 |
給料制度の見直しで全社員の給料を引き上げたため | 53.0% |
求職者へのアピールのため | 48.8% |
他企業が引き上げをしているため | 35.6% |
定着率を高める・離職を防ぐため | 35.5% |
既存社員のモチベーションアップのため | 31.4% |
政府からの要請があったため | 5.2% |
その他 | 3.2% |
初任給を引き上げた理由の割合として一番高かったのは、「給料制度の見直しで全社員の給料を引き上げたため」で企業全体の53%にも及びます。これには、今まで日本企業が給料のベースアップに消極的であったことや、近年の物価高が大きく影響しているようです。
初任給の引き上げ額についてのデータは次の通りです。
初任給の引き上げ額 | 企業全体での割合 |
5,000円~1万円未満 | 36.0% |
~5,000円未満 | 29.3% |
1万円~2万円 | 24.7% |
2万円~3万円 | 7.8% |
3万円~4万円 | 1.5% |
5万円以上 | 0.7% |
初任給の引き上げ額では「5,000円~1万円未満」が企業全体の36%と最も多い割合でした。
その一方で、資金力のある大手企業の引き上げ額の高さが話題になっています。
たとえば、人材獲得競争がとくに激しいIT業界では、大手である「伊藤忠テクノソリューションズ: CTC」が従来は23万円だった大卒初任給を29万5500円へと引き上げる方針を示しています。金額にして6万5500円アップです。
給与面では大手に太刀打ちするのが難しい中小企業は、人材獲得競争でますます厳しい立場に立たされています。
なぜ新卒採用者の初任給が上がっているのか
なぜここまで、新卒採用者の初任給が上がっているのでしょうか。
ここでは、その背景と新卒者の必要性について解説します。
初任給が引き上げられる背景
初任給が引き上げられる背景としては、先述した給料制度の見直し以外にも、若者の働き方に対する意識変化があります。
近年の若い世代は、最初から賃金が高く、キャリアアップが見込める企業を目指す傾向があります。その一方で、今まで日本企業は大手であっても入社から数年は低い賃金に抑えるのが一般的でした。
給料ベースを上げれば、当然費用がかかります。また、一度上げてしまうと簡単には下げられません。新入社員が2年目社員の給料を上回るような逆転現象が起こらないためにも、既存社員との給与調整も必要です。このようなデメリットから、日本企業は初任給アップに消極的でした。
しかし、今の新卒者は日本企業の労働条件が合わなければ、外資系企業を目指すという選択肢もあります。ミスマッチがあれば、優れた人材はすぐ別企業へ目標を変えてしまいます。
このような事情から、大手であっても対策なしでは望んだ人材が集まらないのが現状です。実際にマイナビ調査によると、2024年卒の採用充足率は75.8%と過去最低を記録しています。
日本企業が新卒者の意識変化に対応せざるを得なくなっているのも、初任給が引き上げられている背景です。
新卒採用の必要性
デメリットのある初任給の引き上げをしてまで新卒者を採用したいのには、それだけ必要性があるからです。
新卒採用の必要性は主に3つあります。
1.組織の若返り
2.企業文化の継承
3.将来のコア人材の獲得
新卒者が入ることで組織は年齢構成を適正化できます。また、若い人が加わることで、世代による価値観のアップデートも期待できるでしょう。
新卒者はすでに他社を経験した中途採用者より、企業文化や理念、技能、ノウハウを受け入れやすい傾向があります。そのため、将来の幹部候補・コア人材の育成にも適しています。
企業文化を存続させ世代交代していく上で、新卒採用は必要不可欠です。だからこそ、企業は初任給を大幅に引き上げてでも新卒者を求めているのです。
新卒者が企業に何を求めているのか
必要性の高い新卒者ですが、先述した通り、中小企業が給与面で新卒者に大手以上の好条件を出すのは困難です。
一方で、新卒者が企業に求めているのは収入だけではありません。
ここでは「マイナビ 2024年卒大学生就職意識調査」から大学新卒者の就職観と企業選択ポイントを解説します。
2024年大卒者の就職観は次の通りです。
就職観 | 2024卒割合 |
---|---|
楽しく働きたい | 38.9% |
個人の生活と仕事を両立させたい | 22.8% |
人のためになる仕事をしたい | 11.9% |
「楽しく働きたい」が38.9%の最多で「個人の生活と仕事を両立させたい」22.8%が続きます。自分の楽しみやプライベートとの両立がトップ2にランクインする点から、精神的にも肉体的にも無理せずに働きたい、という就職観が伺えます。
企業選択ポイントは次の通りです。
企業選択ポイント | 2024卒割合 |
---|---|
安定している | 48.8% |
自分のやりたい仕事(職種)ができるか | 30.5% |
給料の良い | 21.4% |
1位の「安定している」と2位の「自分のやりたい仕事(職種)ができるか」は、就職観に沿った企業選択ポイントといえます。
企業の安定性や給料面では、大手企業が圧倒的に有利です。そのため、中小企業は新卒者がやりたいと思える仕事を与えられるかが、採用成功のカギになるでしょう。
中小企業がとくに意識すべき対策
新卒者が企業に求めるものを知った上で、どのような採用対策ができるでしょうか。
採用対策はさまざまありますが、最後に中小企業がとくに意識して取り組みたい3つを紹介します。
ターゲットの明確化
1つ目は採用活動の軸となるターゲットの明確化です。
どのような新卒者を採用したいかが曖昧だと、採用活動は成功しません。職場環境を把握し、「自社にマッチした新卒者」をペルソナ設定などで明確にすることが大切です。
まず経営陣がペルソナの枠組みを作り、配属予定の現場と共有・ヒアリングを行い、詳細を設定していきます。仮のペルソナができたら、認識にズレがないか、再度経営陣が確認します。確認時に、出来上がったペルソナを現実とすり合わせて妥協点を考えておくのもポイントです。
たとえば、昨今の就職観は企業側からすれば好ましくないかもしれません.。しかし、この点を他部分と調整して妥協できればターゲットの幅が広がるはずです。
理想と現実のバランスの取れたターゲットを設定するよう心がけましょう。
WebサイトやSNSの活用
2つ目は知名度を上げるためのWebサイトやSNSの活用です。
知名度の低さは中小企業の弱点です。弱点をカバーする施策として、インターネットからの情報発信は欠かせません。知名度を高めるために、WebサイトやSNSを活用して、求職者に自社について知る機会を増やすことが大切です。
現在の求職者はインターネットを通じて求人情報を集めます。魅力的な企業情報を掲載した企業サイトを作れば求職者は応募しやすくなります。
また、SNSも広報活動と相性のいいツールです。自社運用ならコストがほとんどかからない上、一度話題になると爆破的に情報を拡散できます。
中小企業は、弱点である知名度をインターネットを活用してカバーすることを心がけましょう。
内定者フォローの実施
最後は内定辞退を防止する内定者フォローの実施です。
自社にマッチした人材を見つけて内定を出しても、辞退されればすべて水の泡です。それだけに、内定辞退を防止する対策は非常に重要です。
内定が出ても、入社までの待機期間に不安や悩みが原因で辞退する新卒者は珍しくありません。中小企業ではとくに多く、内定辞退率は6割にも及ぶといわれています。そのため、中小企業は内定を出してからは積極的に内定者フォローに努める必要があります。
内定者フォローには以下の方法があります。
・電話やメールでの連絡
・座談会や懇親会
・研修
・社内イベント
フォローは一度だけでなく、定期的に行います。中小企業の採用活動は、内定を出してからが本番だと心がけましょう。
まとめ
2024年新卒採用者の初任給が上がった背景としては、まず、今まで日本企業が給料のベースアップに消極的だった反動と近年の物価高があると考えられます。また、2024年卒の採用充足率は75.8%と過去最低を記録しました。企業の人材獲得への本気度が増し、新卒者の意識変化に対応した結果でもある可能性も高いでしょう。
初任給の値上げ幅では、中小企業は大手に勝ち目はありません。一方で、昨今の新卒者は無理なく働きたいという就職観が強いようです。
中小企業の採用活動では、新卒者の意識に合わせたペルソナ設定や、安定感を印象付ける知名度の向上、不安を取り除く内定者フォローが重要になるでしょう。