少子高齢化で働き手が減っている現代では、企業の採用数増加に伴い、人材の獲得競争がより激化するのは確実です。
優秀な人材を幅広く獲得するための一つの方策として、採用サイトがあります。求職者の9割が採用サイトを見ているとされており、魅力的な採用サイト作りは採用の成功を左右すると言ってもいいでしょう。

しかし、自社の採用サイトを魅力的なものにして求職者に訴求するには、どのようなコンテンツにするのがいいか、迷うことも多い筈です。
さまざまなコンテンツの中でも、特に自社の魅力を訴求しやすいのが、企業ストーリーです。

本記事では、企業ストーリーを掲載するメリットや魅力的な企業ストーリーにするためのポイントについて解説します。

採用サイトの企業ストーリーとは

採用サイトの企業ストーリーとは、企業の背景や理念、価値観、歴史、目標、文化、ビジョン、企業の存在理由、そして社員たちの活躍や日常を伝えるためのコンテンツです。
企業ストーリーは、単なる会社情報や求人条件以上に、企業の本質や働く意義を深く伝える役割を持っています。

企業ストーリーの主な目的は、求職者が自分の価値観や目標と、企業の理念が一致していると感じてもらうこと、他の企業との差別化を図り、競争優位性を高めることです。
企業ストーリーには、企業のミッション・ビジョン・バリュー、創業の歴史やエピソード、社員の声やストーリー、プロジェクトや製品の成功事例、企業が大切にしている文化などが含まれます。

採用サイトに企業ストーリーを掲載するメリット

採用サイトに企業ストーリーを掲載することによって、以下に記すようなメリットを得られます。

企業の魅力を具体的に伝えられる

企業ストーリーでは、企業の魅力、理念やビジョン、歴史、独自の文化などを具体的に説明できるため、求職者が企業の雰囲気や方向性を理解しやすくなります。
求職者が自分の価値観と一致する部分を見つけられれば、応募意欲が高まり、応募率が向上することでしょう。

また、ストーリー形式で魅力を伝えることで、感情に訴える力が強くなります。
特に、社員の成功体験や実際のプロジェクトの裏話など、リアルなエピソードを共有することで、企業への信頼感や親近感を抱かせることが可能です。
企業の魅力が具体的に伝われば、求職者としても自分がその企業で働くイメージを描きやすくなります。

社風や働き方をリアルに伝えられる

社風や働きがいといった定性的な魅力をリアルに伝えるためには、項目を箇条書きにするよりも、実例を掲げたり、ストーリー形式で伝えたりしたほうが、より効果的です。
企業ストーリーを通じて、企業が大切にしている文化や働き方を具体的に伝えることができ、求職者がその企業での社会生活をイメージしやすくなります。

企業ストーリーでは、実際に働く社員の経験やインタビューを交えた内容が効果的です。
社員がどのように企業文化に適応し、成長してきたかを紹介することで、社風や働き方がよりリアルに伝わります。
最近では、リモートワークやフレックスタイム制など、多様な働き方が重視されているのが潮流です。
これについても企業ストーリーを通じて、これらの取り組みが具体的にどう実現されているかを示すことで、求職者に安心感を与えられます。

求職者の共感を得やすい

プロジェクトの具体的な成功事例や、新しい分野へのチャレンジのストーリーを採用サイト内に企業ストーリーとして掲載することで、求職者の感情に訴え、共感を得やすくなります。
この共感は、企業と求職者の間に強い結びつきを生み出し、採用活動を効果的に進めるために欠かせない重要なものです。プロジェクトの成功事例のような具体的な企業ストーリーを通じて、企業が目指している目標や理念、企業文化をリアルに伝えることができます。

このような具体的なストーリーは、求職者に「自分もその一員としてプロジェクトの成功のために働きたい」と思わせるために非常に効果的です。
企業ストーリーは、単なる情報提供にとどまらず、求職者が企業に共感し、応募の動機を強めるための重要な手段です。

魅力的な企業ストーリーにするためのポイント

魅力的な企業ストーリーにするためには、以下に記すようなポイントを意識するといいでしょう。

ストーリー性を持たせる

ストーリー性を持たせることで、企業の歴史や価値観が単なる事実や数字の羅列ではなく、感情的なつながりを生み出し、求職者の心に残る強い印象を与えることが可能です。
このアプローチにより、企業のアイデンティティや独自性が際立ち、求職者が企業に対して共感や興味、関心を抱きやすくなります。

ストーリーは感情的なつながりを生み出すため、求職者に企業の文化や価値観を「ただ知る」のではなく、「共感する」機会を提供します。感動的なエピソードや実際の社員の体験談を交えることで、企業の魅力がより伝わりやすくなる効果が大きいです。

ビジュアルコンテンツを活用する

文章だけでなく、写真、動画、インフォグラフィックなどのビジュアルコンテンツを活用することで、企業ストーリーが視覚的に魅力的になり、求職者の興味・関心を引きつけやすくなります。
ビジュアルコンテンツを活用すれば、文字情報だけでは伝えきれない企業の雰囲気や文化、働き方などを視覚的に表現することが可能です。

特に写真や動画は、文章だけでは伝えきれない雰囲気や空気感を伝えるのに非常に効果的です。
実際の方法としては、社員が語るエピソードや体験談を動画で紹介する、働く環境や社内イベント、チームの協力の様子を写真・動画で紹介するなどが考えられます。
特に、社員の笑顔やチームでの協力シーンは、企業の温かみや働きやすさを伝える重要な要素です。

求職者の視点を意識する

求職者が自分自身を企業の一員としてイメージできるようにするために、企業ストーリーは求職者の視点を意識した内容を盛り込むことが非常に効果的です。
求職者が「この企業で働きたい」「この企業の文化に共感したい」と思えるようなストーリーにすることで、応募意欲が高まります。
働き方、キャリアの成長、仕事の意義など、求職者が求めているものに焦点を当てることで、企業の価値観やカルチャーが自分に合っていると感じやすくなります。求職者に対して「自分にフィットする」と感じさせることができると、応募へのハードルが下がり、共感を得ることが可能です。

求職者にとっての分かりやすさを大事にする

求職者にとっての分かりやすさを大事にすることで、求職者はストーリーの内容を簡単に理解でき、企業の魅力や価値観をしっかりと把握できます。複雑な表現や専門的な用語を避け、シンプルかつ直感的に伝えることが、ストーリーを効果的に届けるための鍵です。
分かりやすい内容であれば、求職者が短時間で企業の特徴や文化を把握できるようになるため、企業ストーリーがより記憶に残りやすくなります。

特に、初めてその企業を知る人にとっては、分かりやすさはエントリーする動機を強める重要な要素です​。
具体的な方法としては、簡潔な文章を心がける、視覚的要素を取り入れる、要点を明確にする、専門用語を避けるといった工夫をするといいでしょう。

喜怒哀楽や挑戦のプロセスも大事にする

企業ストーリーでは、単に情報を羅列するのではなく、喜怒哀楽の感情や挑戦のプロセスを盛り込むことで、人間味やドラマ性を感じられる内容となります。
これにより、求職者に強い共感や感情的なつながりを生み出すことが可能です。喜びや悲しみ、困難とその克服といった感情のエピソードは、求職者に「企業も同じように挑戦や苦労を経験している」というリアリティを感じさせ、求職者が企業の姿勢に共感しやすくなります。

「なぜこの挑戦を選んだのか」「どのように乗り越えたのか」といったプロセスを示すことは、企業のビジョンや強みを浮き彫りにし、企業の価値観や文化が具体的に伝わります。
具体的な方法としては、成功や困難を共有するエピソードを掲載する、社員の挑戦を紹介する、感情的な場面を具体化するといった工夫をするといいでしょう。

まとめ

どのような企業でも、創業の苦労、ビジネス拡大のための苦労や物語、日々の業務での大変さや面白さ、何かを成し遂げた時の達成感など、企業と人にまつわるドラマがあるものです。
そのドラマを企業ストーリーとして、ストーリー性を持たせ、視覚的に見やすく、理解しやすく、感情も交えて紹介することで、求職者は企業に対して人間的な魅力を感じるようになります。

魅力的な企業ストーリーにするには、求職者が知りたい情報を反映する、分かりやすく構造化されたストーリーにする、求職者に響くトーンとメッセージにするといったことが重要です。
これらによって、求職者が企業に興味・関心を持ってくれるようになれば、採用サイトは成功することでしょう。