西洋美術に学ぶ視覚的感覚とバランス

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2018.05.09 その他

西洋美術に学ぶ視覚的感覚とバランス

『デザイナー職で働く身として、センスって重要じゃないですか。』と、言うセリフをしばしば耳にします。
確かに重要な事ですが、単に『センス』と言っても“何をもって”のセンスなのか。
奇抜なアイディア、気持ちの良いバランス感覚、絶妙な色彩感覚、色々あるかと思います。
デザイナーとして多少ベテランと言える年月を重ねた筆者も、これまで自分の用いる『センス』で
幾多の案件に携わってきた訳ですが、思い返せば思い返すほど、元々は『センス』の無い凡人だった事を感じます。
私がデザイナー職に興味を持つきっかけの一番のルーツ、それは『誰に習う事も無く、少しだけ他人より写実的に描くことができた』というポイントでした。
結果的にデフォルメする事や、アイディアの引き出しの乏しさなど、後々思い知らされる事になるのですが、そのころは多少なりの勘違い野郎でした。
そこからアートに興味を持ち、デザインに興味を持ち、広告に興味を持ち、、、と月日を積み重ねた結果今の筆者が出来上がりました。

今回はもの凄くファジーな内容ですが、そのルーツであるアートから一つ記事を書こうと思います。

 

芸術の天才

画像引用元:MUSEY、https://www.musey.net/486

初聖体拝領(パブロ・ピカソ作)
おそらく絵が好きでもなく興味のない人でも知っているであろうピカソ。芸術の天才と呼ばれる画家で一番の有名人です。
代表作は『泣く女』や、スペインの至宝とも言われる『ゲルニカ』が有名です。
その作風は顔の鼻が横に付いていたり、手足がねじれていたりと“クセが凄い”です。
でも、冷静に考えてみて“何でこの絵が〇〇〇億の価値があるの?”って思った事って無いでしょうか。

 

パブロ・ピカソ

パブロ・ピカソ(本名もの凄く長い)を簡単に説明すると、約100年前から50年前くらいにかけて
スペインを中心にヨーロッパで活動された画家です。若くしてその才能を評価され
画家として生きているうちに売れたピカソは91歳と長生きされたこともあり、活動期間も長く比較的作品も多いです。
その長い活動期間の中で特徴ともいえるのは作風の変化で、大親友を自殺で亡くし失意にいた数年は
“青の時代”と言われ青の絵ばかり書いていたり。恋人ができて明るい配色を多用して描いた“バラ色の時代”
アフリカ彫刻に影響を受けた時代と様々。ピカソは多くの女性と恋をした人でもあり好んで女性を描きましたが
最終的にはそれぞれ描く女性で作風が変わりました。この表現力の幅の広さも天才と言わしめる部分であったりしますが
何といっても最大の功績ともいえるのが『キュビズム』と言われる技法(鼻が横に付いてたりする奴)
を考案した事にあります。

 

さて、今回取り上げた作品の初聖体拝領は、ピカソにしては“クセ”が凄くもない、いたって平凡な作品で

良くありそうな模写の絵のように見えます。そう、まだ独自の技法を考案する前の若い頃の作品で、
14歳で描いた作品になります。今の年代に置き換えて中学生でここまで写実的に描けたら確かに凄いですが
後のキュビズムがあるだけに、それまでの作品は平凡であるとか評価をしない方の意見も少なからず…。
ただ、この作品には彼が後にキュビズムを生み出す視覚的感覚、才能の片鱗が見受け取れるのです。

構図解説

画像引用元:MUSEY、https://www.musey.net/486

まず、この絵の主役は言うまでもなく少女、キャンバスの中央部分ににその顔が位置して
周囲と大きく明暗で差をつけて引き立たせています。
次に回りの人物の視線、顔の向きが少女の方向を向き、視線を少女に誘導しています。
そして最大のポイントである構図です。
まずこの絵ですが、精密に描かれた模写であるように見えますが、厳密に一点透視図法・二点透視図法を用いるなどして
空間を描くとまずこのような構図にはなりません。ピカソ自身が意図的に空間を歪ませている事が伺えます。
祭壇を分かるように斜めから描いておきながら、主役の少女は顔が分かるように真横から描かれています。

画像引用元:MUSEY、https://www.musey.net/486

次に絵全体にある視覚を誘導する線の方向ですが全てが主役の少女の顔に向かうように狙って構成されています。(矢印部分の線の部分)
意図的に空間を歪ませているポイントはここにあります。
左上の暗と右下の明の均等なバランス感などもあったりしますが、そのあたりの話はさておき
絵の構成は中央に視点を持ってきたシンプルなもので、正直単調なものを好まない筆者は好みでは無いのですが
若干14歳でこの視覚的感覚を持ち、それを表現できることに凄みを感じるのです。

キュビズムとは

若くから優れた視覚的感覚を持ってして、後に生み出された『キュビズム』。

この一見何が凄いのか分からないものですが、『キュビズム』→『キュービズム』→『キューブ』、語源は立方体から来ていて3Dのルーツとなる存在と言えます。

その中身は、対象を正面・横・斜め・上・下等あらゆる角度から対象を同時とらえて立体を描いています。

そうすることで対象の鼻が横にあったり、体がねじれたような表現になり、独特の“クセ”のような表現になります。

そして、閲覧者のその視点をざっくばらんに動かさせる事によって“躍動している”、あたかも“動いている”ように描いたのが狙いになります。

 

ピカソが現れた事で平面での空間認知の概念が生まれ、今の身近な空間設計、モニターの表現などに影響を与えた。

そんな事を言う人は結構います。(筆者はどこまで本当なのか分かっていませんが)

 

あとがき

大前提として、アートとデザインは別物で本来一緒くたに考えてはいけない事柄だったりします。

ただ、視覚的感覚や配色など、少なからず意識を働かせるポイントは散らばっています。

 

無論全ての絵画がそうであるわけではないのですが、一つの可能性として…。

例えば何となくプライベートで美術館などに行った時、“何となく”この絵画素敵だな、良いな。

で、終わるのではなく(こういった感性も大事でしょうが)。

“何でこの絵は視覚的な誘導がこう流れてここで止まるように描かれているのだろう”とか、

“何でこっちに視線が抜けるように描かれているのだろう”とか、そういった意識が働くか働かないかでは

大分違うのかなと筆者は考えるわけです。

 

この思考を働かせるようにしてアートと触れ合う事で、ものづくりの担い手として

もしかしたら一歩踏み出せるかもしれない。

そんな、もの凄ぉーーーーーーーーーーーーーーーーく、ファジーなお話でした。

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