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企業ロゴ制作で押さえておきたい知識と教養(後編)
デザイン

どうも、SPCデザイナーAです。
前編から引き続き、企業ロゴ制作にあると良い知識や事柄を執筆して参ります。
今回は、制作のより実践的な話が中心となります。
前編はこちら
 

ロゴを制作・変更する目的を理解し、見合った表現にする

新しく設立された会社ではなく、企業がロゴを変更する場合は変更に至る目的や意図が
少なからず存在しているはずで、その意図を理解して表現する必要があります。
企業合併、時代にマッチさせる改修、外的要因、内的要因、色々あると思います。
今回も企業ロゴを見ながら解説していこうと思います。
 

企業発展の目的を理解する


100年以上の沿革がある花王株式会社(名称は何度が改称しています)はこれまで何度かロゴの変更がなされていますが、2009年に“花王”から“Kao”になりました。
この意図は企業のグローバル化を目的としてアルファベット表記変更されていることが伺え実際にアジア圏、北米やヨーロッパに製品を販売していきます。
作り手は企業のCI変化、時代に求められることをしっかりとおさえる必要があります。
 

CIの性質



清涼飲料水の製造販売メーカーのザ コカ・コーラ カンパニー(The Coca-Cola Company)と
ペプシコ(PepsiCo, Inc)のドリンクブランド、ペプシコーラ(Pepsi-Cola)を見ていきます。
(ペプシコーラは企業ロゴではないですが…)
コカ・コーラは創業よりほぼ一貫したデザインで展開しているのに比べ
ペプシコーラは都度デザインの変更をしています。見ると前編で書いた時代的な傾向が
ここでも読み取れますが、この両社の傾向の違いはどういった思想の違いなのでしょうか。
 

歴史と伝統≠先進的でその時代感に沿う

企業ブランディングにおいて、どのような思想を持って運営され、どのような特徴になるのか。
ソフトドリンクの売り上げ市場を見てみると、コカ・コーラ系列が高いシェアを誇り
コーラだけで比べるとペプシコーラが108億3600万ドルなのに対し、コカ・コーラは700億420万ドル(2015年の数値)となり
ダイエットコークやダイエットペプシなど関連商品を相対的に比べたとしてもかなりの差が見受け取れます。
双方の商品の起源は全く別のようですが、起源も一番古くコーラと言えば大抵の人がコカ・コーラを
イメージする人が多いと思います。
私の個人的な感覚での話になりますが、同種間の中で元祖(一番先手の位置づけ)は伝統やブランド(安心)を重んじる傾向があり、
二番先手以降はその時その場所でニーズ・ウォンツに合わせた動きを取る傾向があるように思います。
例えばコンビニ業界に目を向けてみると業界一番先手で規模が一番あるセブンイレブンは世界共通で同じロゴで展開していますが
続くローソンは、商圏分析を考慮してナチュラルローソンやローソンストア100など、営業形態を変えそれぞれ客層に見合った
ビジュアル思考を展開しています。
 

書体

ロゴの使用書体として、伝統や情緒的な表現に向いているのはセリフ書体やスクリプト系の書体が向いていて
先進的な表現にはサンセリフ書体やデザイン書体が向いています。
曲線美はアナログ感を感じやすく、直線や角が立つイメージは先進的でモダンなイメージを抱きやすいです。
こういった視点で現存するブランドロゴを見て、そのブランドのスタイルが何処に重きを置いているのか
思考してみると参考になったり発見があり面白いと思います。
 

オリジナリティの追求

昨今変更されたペプシのロゴ(2010年あたりからの)ですが、こちらのロゴ制作はメディアにも取り上げられ話題になりました。
新しいロゴ制作をArnell Groupという代理店に依頼し、5ヶ月の制作期間を費やして制作されました。
そこでの費用で支払われたのは100万ドル(約一億円)で、制作者は1ヶ月間アジア圏を中心とした
世界各地に出かけ、あらゆるものを見て構想を練り、デザイン制作資料を作り上げたそうです。
そこには、ペプシの伝統から未来への継承のかたちの追求。黄金比やピタゴラスの定理などデザイン哲学を解析した
最も美しいデザインのかたち。相対性理論・重力学など「万有引力」に基づき人々が引き付けられるメカニズム。
見る角度によって表情が変わり、製品ごとに異なるデザイン。宇宙学、磁気流体力学、風水学、磁場…など
あらゆる要素を網羅して制作されたことを、27ページの資料にしたものでした。
https://www.slideshare.net/Foodsfluidsandbeyond/breathtaking-pepsi
大掛かりなリニューアルの割に、そこまで大きく変更されてないが
資料の内容が「厳密に考案されているようだがバカバカしい」「よくわからないけど面白い」と
内容は賛否両論で話題になり、宣伝効果もありました。
ロゴデザインに100万ドルが支払われたことにも注目されましたが
実際にこの変更にともない、世界中の広告塔や自販機などのデザイン変更、更にリニューアルキャンペーンなど
最終的な費用は120億ドル(1,200億円)の費用がかかっていると経済評論家が分析されています。
なかなか、ここまで大掛かりでコストを使った制作は現実的ではありませんが、作り手は
プロセスのもとにコンセプトを固めデザインするわけですから多種多様にものを視ることは重要です。
これは俗に言う“パクリ”をする目的で色々なものを視て参考にするという事ではなく
どちらかと言えば、オリジナリティを追求するにあたって必要な事柄で、かつ他と類似しないために
事前に視ておく(同業種の企業などは特に)ことが望ましいです。
とはいえ、これだけ世の中にたくさんのものが溢れていて、フラットデザインなデザイン志向で
シンプルでソリッドな形状になってくると、意図していなくても一見似ているものというのは出てきてしまうでしょう。
 

コンセプトメイクの難しさ


元々旧・明治製糖から派生した明治乳業と明治製菓は、グループ再編のため2009年に
明治ホールディングス株式会社として経営統合し、ロゴも全て統一されました。
変更当時の頃に筆者は既にグラフィックデザイナーとして働いていましたが、その時は新しいロゴデザインがあまり格好よくは思えず
後々チョコレートのパッケージを見てしっくり来る感じになったのを覚えています。(おいしい牛乳のパッケージの青地に赤のロゴが載ってるのは今でも気になります…)
比較的ロゴの変更時期も近かった、液体ム〇のロゴに酷似しているなどとの話題も上がりましたが
なんといっても個人的には旧明治製菓のロゴのディテールの格好良さに目が行ってしまったという点があり…、
言わずもながら旧明治製菓のロゴを制作されたのはデザイナーなら誰もが知っているであろう亀倉雄策さんです。
※亀倉雄策さんは昭和に日本のデザインの基盤を作ったといっても良い、世界的にも名の知られたグラフィックデザイナーです。
JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)の初代会長となられた方で、現在JAGDAの賞に名前が使われて(亀倉雄策賞)います。
代表的な作品は、1964年の東京オリンピックロゴを含む広告、グッドデザイン賞やNTTのロゴなどがあります。
亀倉さんの後任となる仕事はやはり大変だとつくづく思ってしまう事は多いはずです。
昨今もありました、そうです2020年の東京オリンピック・パラリンピックで起きたロゴの話。
当初発表されたデザインは前年亀倉雄策賞を受賞された有名な方でしたが、世論的にはあまり評価も高くなく
パクリ的な話で訴える人も出たりと騒動になりました。
当時の私は、そのロゴに対してデザインでどうと思う事は無かったですが、作者の作風らしいと思ったのと
競技者目線思考の力強いイメージ(だからこそ一般受けはしなかったのかもしれませんが)であるとは感じました。
後々思う事は、あの発表の仕方もムービーなどで動きの中で発表されればまた違った評価になったのではと思います。
結果的には一般公募で再度作り直されることになってしまったのですが、その頃
俗に『俺が考えたロゴの方が格好良いやろ』的な考えなのか、ソーシャルメディアなどに自慢げにさらしていた
一般の“勘違い”さんには、目に余るものがあったのをよく覚えています。
具体的に、どうかと言うと中にはデザイン自体には可もなく不可もなく位の方はいたかもしれませんが
一番素人っぽい所で目につくのが、やはり安易なコンセプトメイクです。
前途で触れたような事柄が考えられていないというのもありますが、特に素人っぽさでありがちだったのが『桜』をモチーフにしたもの。
都の木はソメイヨシノ、日本の国花は桜だからモチーフに、みたいな発想なのでしょうが沢山目にしました。
そもそもオリンピックに桜がどれくらい関係するのか考えているのか…。
オリンピックの招致活動で採用されたビジュアル(学生が制作し採用)でも桜は使われましたが
招致活動と競技大会本番とではまた意味合いが違います。
招致活動は都のアピールなので華やかさなどは合いますが、本番は競技者が主役で競争の場である事。
そして、開催されるのは夏なのに、わざわざ春に咲く桜を扱う意味合い、海外から東京に来場する方は
桜の花を観れるわけでもなく違和感があります。
ここでは日本というより東京にフォーカスすることを意識した方が望ましいと考えます。
ですから、植物をモチーフにするのであれば、都の木である『イチョウ』の方がまだ合います。
花言葉も、荘厳・長寿・鎮魂と導きやすい意味合い的で、こういったポイントをもとに
コンセプト立てしてあげると良いと思います。
また、『富士山』も同様です。そもそも富士山は東京ではなく山梨・静岡にあり、都心部からも
限られた場所や状況でないと眺めることはできません。日本人である私たちは当たり前のように
認識していることでも、来日する外国人の方は必ずしもそうではありません。
「東京に来たら富士山が視られる」と海外に間違った認識を与えかねないので避けるべきでしょう。
モチーフを使えば絵映えもするしデザイン的にも様になるからとデザインに採用しがちなのが実の所だと思います。
桜や富士山を扱う事を絶対に避けるべきとは言いませんが、重要なのは実状を理解しコンセプト立てをしてあげないとお粗末なことになりかねません。
絵遊びではなくロゴはその象徴になるもの、そこをはき違えないようにしましょう。
 

小文字化の流れ


前途でも紹介しているペプシのロゴや、明治のロゴを視ても分かりますが
昨今のロゴの傾向として、一部の業種業態で表記の小文字化の流れが見受けられます。その傾向の理由は主に2種類あると考えられます。
 

1つ目:低年齢層受けを狙ったものに対して

活字の形状を視てみると大文字は角が立ちゴテゴテしく視えるのに対し、小文字は角が取れ容姿が柔らかくなります。
そのため簡単に言うと“かわいく”なるので低年齢層受けする形状になってきます。
子ども向けの対象商品を扱うものなどで見受けられ、通信業界もその傾向が見受けられます。
考えてみるとひと昔前はケータイを持つのは高校生の年齢位からが一般的でしたが
現在は小学生の年代にも多く普及しています。
 

2つ目:IT企業など移り変わりの早い業界に対して

歴史や伝統を表現する場合は“ドッシリ構えて安定感のある”ように視える大文字が合わせやすいですが
IT企業などは、移り変わりが早く状況に応じて動ける柔軟性が求められ、安定感のある形状より
どちらかと言えば“フレキシブルな骨格”が表現として合う傾向にあります。
 

まとめ

前編・後編と2回にわたり長々と執筆させていただきましたがいかがでしたでしょうか…。
筆者の個人的な主観も入りますので、一概に全てが正しいとは言い切れませんがロゴ制作においてのヒントやお力添えになれば幸いです。
また、弊社に依頼頂ければ企業ロゴ制作(レギュレーションマニュアル含む)からサイト制作まで一貫して
しっかり考えて制作させていただきますのでよろしくお願い致します。

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