ECコラム

既存客からの紹介でECサイトへ流入させる施策について

Webマーケティング

はじめに

弊社では最近ECサイトの新規制作の依頼が増えてきまして、様々なサイトを制作しています。
しかし、Amazonが台頭する中で自社ECを制作するのは費用対効果が合わないのではないか?と心配されるほど、ECサイト制作後の集客に悩みを持つ事業者も多くなっています。

Webサイトへの流入として一般的なものを挙げるとSEOやリスティング広告、SNS広告等が挙げられます。その中でもSEO対策とリスティング広告は特に顕在層にリーチできる施策となっていますが、検索結果上位に表示されるためには多少の時間がかかりますし、リスティング広告の出稿には費用がかかります。各商材でのEC化率が高まり、競合が多くなっているためこれらはどんどん難易度が上がっている状況です。
要するに、顕在層向け施策はこれまでよりも予算をかけざるを得ず、潜在層向けの施策を行うと効果を実感するまでに時間がかかるという、EC事業者には悩ましい事態となっています。
そこで今回はECサイトへの誘引策の中でも今まであまり語られることのなかった、既存顧客からの紹介施策にフォーカスを当ててみたいと思います。

 

そもそもなぜ既存顧客からの紹介施策を取り上げるのか

マーケティング界の超有名人、フィリップ・コトラー教授が2016年に唱えた最新の概念に「マーケティング4.0」というものがあります。
「マーケティング1.0」は物がない時代のマーケティングで、新しい機能や製品そのものを作ることに重点が置かれ、物の購買の選択肢が多くなってきた時代の「マーケティング2.0」では他社との差別化こそが戦略になりました。「マーケティング3.0」は、2010年ごろからコトラー教授が提唱を始めたもので「価値主導型」のマーケティングが必要だというものです。同じような商品やサービスが飽和状態の時代、購買意欲を引き出すために、顧客の内側にある「社会をより良くするという精神」に訴えかける手法がトレンドとなりました。
このような流れののちに、デジタル領域での発展を考慮して提唱されたのが「マーケティング4.0」です。

これまでの消費者行動のフレームワークはAIDMAやAISASが活用されていますが、「マーケティング4.0」では5Aというフレームワークで考えます。

  • Aware(認識する、知る)
  • Appeal(記憶や印象に残る)
  • Ask(調べる)
  • Act(購入する)
  • Advocate(周りに勧める)

それぞれの頭文字からきています。

以前の「AISAS」と比べると、調べる段階が”Search”から”Ask”に、周りへの”Share”が”Advocate”に変化している点が特に変化のある部分で、現在のSNSをはじめとするデジタルマーケティングで得意とするところです。さらに、「マーケティング4.0」の最終的な目標は、「顧客を推奨者に変えること」と定義されています。
つまり、今回ご紹介する既存顧客からの紹介を利用する施策は、スマートフォンが浸透しSNSが盛況の現在においてとても理にかなった施策であると言えます。

 

SNSが盛況の今、人の心を動かす「シミュラークル」とは

2016年に電通メディアイノベーション研究所が行った調査で、SNS上の他のユーザーの影響で、購買(消費)行動をとったことのある人は77.6%という数字が出ています。
(参考:http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0213-009153.html)

実に4分の3以上が購買行動にSNSの影響を受けているという結果になりましたが、これはシミュラークル型の情報伝播が影響していると言われています。
シミュラークル型をざっくり説明すると、「なんかみんなが話題にしているから注目してしまう」というもので、従来のテレビCM等がきっかけのマス型、人気モデルや特定分野の有名人の発信がきっかけのインフルエンサー型とは違った形での情報伝播方法です。

ECビジネスでもこの流れは顕著で、すでに様々な記事や調査があります。

(以下抜粋)
とある大阪にあるハンコのECサイトでは、Twitterを契機にブレイクした事例があります。一般の人がその店の商品にまつわるストーリーに魅了され、「自分は知っているよ」とアピールしたい心理も手伝って、多くのリツイートで拡散されたのでした。以前であれば、マスメディアで有名女優がアピールすることで商品が購入され、ヒットが生まれるということはありましたが、今は違います。ネットが普及しスマホが浸透していく中で、必ずしもそれが全てであるとは言えなくなってきています。また、靴の通販「ヒラキ」はInstagramを活用して顧客の幅を広げたショップです。そもそもInstagramは、昨今「インスタ映え」という言葉が流行語となったことからもわかるように、その認知はかなり高くなっていますが、これを写真のSNSと捉えていると、本質は見えてこないと思います。これを感性によって繋がるコミュニティと考えてみる。ハッシュタグなどで紐付けされた写真に"共感"すれば「いいね」がつき、関係性が生まれます。この点はFacebookが会社、学校、性別、年齢などの属性で繋がるのと大きく異なります。

このヒラキの例で言えば、同ショップの公式アカウントを主婦が広めました。同社側もユーザーからの投稿を中心に、フォトコンテストを開催し、投稿された作品を自社の公式アカウントで紹介することで、Instagramの公式アカウントでフォロワーとのコミュニケーションを活性化させたことにより、コミュニティが生まれ、店舗のファンとなっています。集まった人同士は興味関心が近いので商品購入につながる度合いも大きいです。
(参考:https://ecnomikata.com/ecnews/18402/)

 

5Aフレームワークに則るECサイトを構築するためには

周囲の人の紹介が購買の意思決定に効果をもたらすのであれば、既存の施策で見直されるべきは「アフィリエイト広告」ではないでしょうか。アフィリエイト広告はWeb広告の一つで、商品やサービスについてブログやWebサイトなどの媒体で紹介して、閲覧した人が購入することを目的とする広告手法です。一般的に、購買などの成果に伴って紹介者が報酬を得る仕組みです。報酬地点、報酬金額を事業者が自由に設定できる点がアフィリエイトのメリットですが、これもまた競合が多くなり、成果金額のつり上げに巻き込まれることも少なくありません。また、報酬を目的としたいわゆるアフィリエイターを紹介者の対象としているため、場合によってはブランドイメージの棄損に繋がってしまうデメリットもあります。

既存の施策での「事業者→アフィリエイター→一般消費者」という流れを「事業者→既存顧客→その周囲の消費者」と置き換えると、5Aの流れに当てはまります。報酬目当てでの紹介でないため、先に書いたような報酬のつり上げ合いに巻き込まれることもありません。また、ブランドや製品、またはサイトのファンであるため、ブランド既存のリスクも少なく済みます。むしろ紹介での販促という、アフィリエイトの本質に立ち返ったと言えます。

 

既存顧客からの紹介による流入の有効性を概念としてお話しましたが、実際に行う場合にどのような仕組みをサイト内に設ければよいでしょうか。事例を交えて紹介したいと思います。ポイントは既存顧客の判別、実際の購買行動のトラッキング、購入された際の紹介者への報酬付与の3つになります。

 

クーポンコード

 

値引き用のクーポンコードを発行できる機能をECサイトに実装し、紹介者ごとのクーポンコードを発行する方法です。下記事例のように、現在はインフルエンサー、マイクロインフルエンサーでの施策が浸透していますが、こちらを応用したものとなります。
メリットは、クーポンコードの発行自体は多くのECパッケージで実装が可能であり、仕組みをつくるのが比較的容易な点です。購買行動のトラッキングも、コードを入力した件数を数えればいいので非常に簡単です。単発で購入する商品が向いている商品と言えます。逆に定期的に購入する商品の場合、都度クーポンコードを打たなければいけないのか等、オペレーション上考えなければならないことがぐっと増えるため、あまりお勧めできません。また、クーポンコード機能のみの実装の場合に報酬額の集計やクーポンコード発行フローなど、考えなければならない事柄が多く発生しそうです。

 

アフィリエイトの仕組みを組み込み

 

アフィリエイト広告では、広告をクリックして広告主のページに遷移する際に、広告を識別する情報をパラメータとして渡し、 ユーザーが広告主ページの成果地点となるページ(会員登録完了や購入完了のページ)に辿り着いた時に 該当のパラメータをアフィリエイトシステムに返却し、管理しているようです。
当然、A8などのASPは広告主として登録すると不特定多数のアフィリエイターから閲覧されるため、ここで記載している「既存顧客からの紹介」とは少し違います。しかし、貴社専用のアフィリエイトシステムを持ってしまえば施策への転用が可能です。
こちらのメリットは、トラッキングがクーポンコードより容易な点、割引でなくても紹介機能を始められる点、紹介された履歴が半永久的に残る点が挙げられます。例えば先ほど、定期的に購入する商品の場合はクーポンコードだと継続的に成果が追えないことをお話ししましたが、アフィリエイトの仕組みを使えばこちらも可能です。

 

弊社クライアントでの実際の構築事例とその背景

先にお話しした既存顧客からの紹介機能を実装した事例があります。
その企業はBtoC向けのECサイト新規立ち上げを考えましたが、それまでその企業はBtoBビジネスを生業としており、一般消費者と直接的な関わりを持っていませんでした。商材としてもEC化が進んだ業界で、サイトへの誘引を考えなければせっかく構築しても勝ち目はありません。しかし、その企業にはECサイトの顧客となってくれる人を既にたくさん抱えている店舗とのつながりが多数あったため、そこに着目しました。

 

まずはECサイトとアフィリエイトシステムをそれぞれ用意して連携し、各店舗を登録しました。次にそこから吐き出される各店舗のパラメータ付きURLからQRコードを作成し、これを貼り付けたチラシを店舗分用意しました。

詳細はお伝え出来ませんが、成果は登録後の購入で、2回目以降の購入もすべて成果として数えます。EC事業者から見ると販路を既存顧客が広げてくれるため広告費をかけずに集客でき、店舗から見るとお客さんを紹介すればするほど利益になり、お客さんは既に多少なりとも関係のある店舗からの紹介なので安心して購買ができるという仕組みを作りました。

終わりに

今回紹介した既存顧客からの紹介での誘引策は、toC、toBによって取るべき戦略が違いますし、金銭的なメリットにするのか、多くの共感を呼びそうな体験を提供するのかなど、サイトによって企画を立てる必要があります。

上記のような構築事例もありますし、もちろん誘引策全般から戦略組みをお手伝いすることも可能です。

ECサイトを新規で立ち上げる際には、是非弊社へお声がけくださいね。

お問合せはこちらから